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好きなことだけ語りつくすメモです。

30.伊藤計劃  

ここ数日の作業BGVとして、伊藤計劃原作のアニメ映画3作をエンリピしていました。「虐殺器官」の配信が始まってから、何度か観ていましたが、やっと「ハーモニー」と「屍者の帝国」も観ました。

若くして夭折した天才、伊藤計劃。映画を観るたび、何というか、やるせない気持ちになります。

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「虐殺器官」

映画から入りました。映画館でかかっているポスターを見て、えらくショッキングなタイトルだな…と興味を抱き、翌週には鑑賞していました。あと、絵に惹かれたのと、監督が村瀬さんだったから!

映画に酔いしれ、原作を読んで、さらに深くて濃い世界観に酩酊しました。幸せなFMOTでした、逆じゃなくて良かった。

<初めて鑑賞した際の感想>

2017.2.4「虐殺器官」@OSシネマズmint神戸
凄かった。めちゃくちゃ面白かった。そして絵や風景がとても美しかった。薄暗い牢屋のような部屋での場面、月光が差す空間に舞う埃がきらきら光る様子とか。満月の下、サバンナで語る男の影の透明感とか、忘れられない。でもそれ以上に、思考的なトラウマになりそう。横っ面を力一杯張られたようなショックがある。ラストも衝撃が大きかった…ちょっと放心状態。そういう意味で、観て本当に良かった。

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映画館を出て、呆然としながら主題歌「リローデッド」をDLして、ひたすらエンリピして、即、Kindleで原作を買って読みました。しばらく配信を探し続けたのだけど全然なくて打ちひしがれて…を繰り返していました。やっと配信が始まった時は、本当に嬉しかった!

鑑賞してから2年。いや、「虐殺器官」が発行された2007年から12年。世界情勢は日増しに、ジョン・ポールの行動意図に寄り添っているように思えてならないです。もし、伊藤計劃が存命で、今の排外主義が加速する諸国を見たらどう思うんだろう、と考えてしまいます。そういう意味で凄くリアルだし、「ありえる未来」だと思ってしまいます。

そしてジョン・ポールの思考。微かにでも”わからなくもない”と思ってしまう自分に失望したし、その感情に抗いたいとも思う。

原作を読んだ後、ラストのクラヴィスの行為が、映画ではちょっとマイルドな表現になっていたのが勿体ないな…と思いました。一層強烈な印象になったんじゃないかなと思うのだけど。

 

映画はキャストがとにかく”好み”でした。特段、声優ファンな訳ではないのですが、今作を見て「好きな声」があるんだと自覚しました。BGVに選んでいたのも、声だけ聴いてても幸せになれるからかな…。特に、クラヴィス・シェパード(CV.中村悠一)とジョン・ポール(CV.櫻井孝宏)が会話している時は、耳が幸せすぎた…。あと、会話のキャッチボールが、自然なのに深くて良いのですよね。情報量の多い原作ですが、会話とテンポのおかげでとても分かりやすくて、良い編集されているなと思います。

そして【監督・脚本・キャラクターデザイン・絵コンテ - 村瀬修功】ですよ!小学生の頃から、村瀬さんの作画が大好きです。特に眼と身体のバランスがとても好みです。背景の色合いも好きです。今作、忘れられないシーンがたくさんあります。空気と光を感じる色、透明感というか…ジョン・ポールと「本質」を語るシーンの夜の透明感とか、満月の光に照らされるサバンナとか。

 

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映画を観てからしばらくして、この件を知りました。山本プロデューサーに本当に感謝です。素晴らしい作品を送り出してくれて。これからも、繰り返しくりかえし、観続けると思います。

 

 

「ハーモニー」

こちらは原作を読んでかなり経ってます。Netflixでタイトルを見かけていたのですが、腰を据えてから観ねば、と変に構えてしまい、なかなか再生ボタンを押せず。

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観てよかったです!「ハーモニー」は三部作のうち、一番、「絵と音がついて幸せだった」作品じゃないかなと思います。脳内で再現していたビジュアルは自分の知見の域を出ないな、としみじみ思いました。特にラストシーンはゾクゾクしました、展開はわかっていたはずなのに…。絶望感がいや増して。

「ハーモニー」は世界観と展開が素晴らしい。幾つもの謎がぴたっとはまっていって、最後に調和し、世界が閉じていく感じ、本当に秀逸です。

あと、御冷ミァハ(CV.上田麗奈)の声が本当に良かった!めちゃくちゃ合っていました。起用理由、めっちゃわかる…と思ってしまった。笑

上田麗奈起用は声が「イッてる」から? 『ハーモ二―』監督の説明に爆笑! | cinemacafe.net

あと、ミァハのシーンの演出(効果というのかな)、どれも好きです。未来感ある。

 


「屍者の帝国」

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実はこの作品だけ、原作を最後まで読めておらず…アレクセイ・カラマーゾフに会いに行く道程あたりで挫折しました。なんでだろう。仕方のないことだけど、やっぱり文章のテイストが違うからなのかな。

なのでクライマックスは「えっそんな展開になるんだ…?」とびっくりしました。でもどうやら、原作とアニメは結構違うらしい?それを聴くと、原作のラストまで追いたくなります。

 

アニメ映画3部作を観終わって、改めて、伊藤計劃という作家の素晴らしさを実感しました。硬質なのに情緒的で美しい文章も、遠いはずなのにリアルな世界観も、人間の本質を容赦なく暴き出す残酷な視点も、何もかも好きです。本当に、惜しまれる。また、原作を読み返そうと思います。

 

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Photo by Rubén Bagüés on Unsplash