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好きなことだけ語りつくすメモです。

55.十二国記-3(「白銀の墟 玄の月」第三・四巻の感想、考察)

十二国記シリーズ最後の長編「白銀の墟 玄の月」第三、四巻を読み終えました…!

18年振りの新刊を半日で読み終えてしまい、今は余韻に浸りつつも寂しくて仕方ありません。十二国記の長編は本当にこれで終わりなのでしょうか…?まだ今回の長編にはいくつかの謎が明かされず残っているまま(の筈)なので、それらは来年発行される短編集で開示されるのでしょうか?(個人的には、慶の主従と泰麒が再会するところも読みたかった…!)

まだまだ興奮冷めやらずですが、自分にとって2019年11月9日は十二国記の最後の長編を読み切った記念すべき日なので、纏まりきっていない感想を書き残します。(また今後、改めて第二・三周目を読んだうえで、考察&疑問点も追記していきます)

 

 

▼第一・二巻を読み終えた後の感想&考察

shiofever.hatenablog.com

▼「白銀の墟 玄の月」前の既刊について、各国の状況等を纏めたメモ

shiofever.hatenablog.com

 

※以下、完全にネタバレしています※

読み終えた感想

第一、ニ巻は謎が謎を呼ぶ…的なミステリアスな展開でしたが、第三巻は序盤から次々に謎が解き明かされていき、ついに終盤で”驍宗が生きている!”と判明してからは怒涛の展開でした。第四巻の圧倒的、かつスリリングな展開は、本当に堪らなかった。エンディングまであと70p足らず、という時点でも「え、これ本当に終わるの…?」と思ってしまって。 でも各地に散っていた仲間達の活躍で局面を突破でき、かつ謎が明かされていくカタルシスは、最高の読書体験でした…!

謎がいくつか残されたままですが、私は、それも十二国記らしくて良いなぁと思います。考察しがいがある!最後までわからなかった、かつ本作の最大の謎が琅燦です。そもそも彼女が阿選を焚きつけて謀反を起こさせなければ、そして妖魔を使役する術を授けなければ、驍宗が行方不明になることもなかったのでは?じっくり読み返して、後々この記事に謎ポイントを追記していきます。(それにしても、阿選が驍宗を討った理由…お、おまえというやつは…‼︎という感じでした。嫉妬だったのかよ…‼︎ でも共感できるような、同情したいような気持も湧いてきてして、認めたくない!と葛藤しています…)

中盤、続々と李斎のもとに仲間が集ってくる様はワクワクしたけど、一方で「こんなにうまくいくわけがない…」と不安になり、案の定、もう絶体絶命というところまで追い詰められて。あとはもう、やぶれかぶれの特攻しかないのか…と絶望していました。(クライマックス直前、耶利は、泰麒が驍宗の元に辿り着けず、かつ阿選に捕らえらてしまうような事態になったら、泰麒を殺すつもりだったよね…黄朱にしか出来ないことって…)

序盤から李斎と共に旅をしてきた仲間達が次々と死んでいったのが辛くて仕方なくて…一番泣いたのが飛燕の死でした。最期に、泰麒に会ってほしかったなあ…

そしてまさか、泰麒が人を殺めるとは。そもそも、たった一人で偽朝に立ち向かい、阿選を新王と呼び、額ずいてみせて…およそ麒麟とは思えない行動の数々、目的を達する為に揺るがずない強靭さ、本当に大きくなられたなぁ…と。「魔性の子」を想起させる述懐が次々に登場して…蓬莱での悲惨な出来事がさらに泰麒を強くし、彼らの死のうえに自分があるのだから、必ず成し遂げなければならないのだという悲壮な決意があったのだと思うと、辛くもあり、広瀬の献身が報われたような気もして、本当に切なさと嬉しさが入り混じった、複雑な気持ちになりました。本当に、驍宗が生きていて、そして戴を奪還できてよかったです。
終盤、阿選の元から驍宗・泰麒を奪還し、江州へと駆けていくシーン。いろんな人物の台詞と述懐がとめどなく綴られる場面を読みながら、ああこれは、泰麒と驍宗の物語ではなく、戴の人々の群像劇なのだと思いました。十二国記の世界の主人公は、王と麒麟を取り巻く、また、王と麒麟が何よりも大切にする市井の人々で。それが色濃く現れたのが今作で。

読みながらずっと、「ああ、これは名もなき人々の”祈り“の物語なんだな」と思っていました。祈りが奇蹟を呼び起こす、尊い物語。本当に、素晴らしい作品と同じ時代を生きられて、幸せです。

小野不由美先生や、このムーブメントを最大限に盛り上げてくれた新潮社さん、小冊子やSNSを通じてファンとお祭り騒ぎをしてくれた書店員さんに感謝です。新刊発売のニュースから今日まで、本当に楽しかった…! 

realsound.jp

 

 

謎・考察まとめ(11/11追記)

ここに後日、「白銀の墟 玄の月」第三・四巻に関する考察を纏めていきます。

※改めて、第一・二巻読了後に書いた感想記事を見返したのですが、疑問点や状況を書きつけるだけだったのが我ながら惜しいな…と。展開予想しておけば、もっと面白かっただろうに!予想していたことは唯一「阿選も何者かの謀略により傀儡にされているのでは?」という点でしたが外れました。阿選め…!笑

明かされていない?謎

  • 琅燦の狙いは、何だったのか?:(11/11)まだ2周目に行っていないのでふんわり予測ですが、王や麒麟を持たない(天帝が定める理の外にある)黄朱の民のための実験だったのかな?と。黄朱の民が犬狼真君に祈って、黄朱の里に里木を授かった…いつか「ここが私達の国だ」と宣言するために必要なルールを探ろうとしたとか。あるいは里木を授かり、規模が大きくなっていくことで、理に触れないように気を付けなければ天帝の怒りを買ってしまう…的なことがあって、その危ない橋を渡らないようにするために試したかったとか…。ただ、やっぱり琅燦が驍宗を軽んじていたようには到底思えないので、どうも違和感が拭えないのでした。
  • 泰麒が膝をついた理由は?(第二巻P159)
  • 泰麒の「麒麟の力」が戻ったのはいつ?使令たちは?
  • 鳩に狙われた=魂魄を抜かれた人の行く末は?
  • 玄管の正体は?
  • 耶利の主公の正体は?
  • 行方知れずのままの人々の行方は?(潭翠は)
  • 天命や理の謎は?
  • 妖魔を操ることができるなら、他国の転覆(柳)も関係がある?

謎は明かされたが整理しておきたい事項

  • 六年前の驍宗の狙い
  • 阿選が謀反を起こした理由
  • 阿選が政を放り出していた理由
  • 戴に妖魔が(そこまで)湧いていなかった理由
  • 驍宗が行方知れずだった六年間
  • 泰麒の作戦と結果

 

こちらのサイトは考察や予想がわかりやすく纏められているので、更新が楽しみです…!

hungry-bear.net

juunikokuki.hatenablog.com

 

個人的名場面集

初見時に「ここはやばい、泣くわ…!」と鳥肌が立った、個人的名場面を纏めします。

第三巻

P20:泰麒が項梁に「驍宗様が王です」ときっぱり告げる場面。よかった…!と早々に胸を撫で下ろしました…二巻読了後、ちょっとだけ泰麒を疑ってしまって申し訳ない…と思いつつ(でも信じてました!)

P.111白幟が轍囲の生き残りの民達で構成されており、驍宗の無事を信じて探し続けている…とわかる場面。世代を超えても受け継がれる、驍宗と轍囲の民との強い絆を感じて震えました。

P. 193:泰麒が正頼を助けるべく、兵士を手に掛けようとして逡巡し「先生」と呟く場面。蓬莱に残してきた広瀬のことを思い、自分を奮い立たせようとする姿に泣きました。

P. 225泰麒が阿選に額ずいてみせる場面。ここでも蓬莱の陰惨な記憶を呼び起こし、亡くなった彼らの痛みを思えば、と苦痛に耐える泰麒。「魔性の子」の様々な場面がぶわっと脳裏に浮かんで、堪らなくなりました。

P. 244葆葉が仲間だと判明する場面。これで戦えるかもしれない!と光明が見えたような…わくわくしました。(葆葉、生きていてほしかった…!)

P. 273:泰麒のもとに巌趙が参じた場面。やっと戻ってきた…!本当によかったねえ…と目頭が熱くなりました。

P. 307:李斎の麾下である泓宏が生きており、かつ霜元率いる残党が六千余、と判明した場面。キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!! と大変燃えました。

P. 336驍宗様ーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎ 本当に震えました‼︎ そして、二巻を読んで、きっとこの供物は驍宗のもとへ送っているんだろうと思っていましたが、まさか父子が「この荷を受け取り、生きながらえている人がいる」と知らずに籠を流していたとは…。子が栄養不足で亡くなってしまうほどの貧困の苦境にあっても、わずかな食糧を捧げて祈らずにはいられないほど、民の苦しみと願いの強さを思うと…遣る瀬無いです。

P. 353:襲撃と落盤に見舞われても、驍宗が生き延びた理由が明かされる場面。ここを読んで、これは祈りの物語なのだな、と思いました。民の祈りが、奇蹟を呼び起こしたんだなと。

P. 369:恵棟が泰麒の前で「阿選を王と認めない」と、書卓を押し倒すほど激昂する場面。阿選の麾下だった恵棟が、苦しい胸の内をぶちまけ、泣きながら「許さない」と断言する恵棟に痺れました。(第四巻で魂魄を抜かれてしまった…生きて抜いてほしかった…!)

 

第四巻

P. 17:騶虞を捕らえる罠を張りながら泰麒を思い出す驍宗。シリーズを通しても、驍宗が泰麒について述懐する場面は希少なので、ぐっときました。

P. 77:泰麒から文州に行ってくれと請われ、戴奪還の未来を思い描いて恵棟の気持ちが昂る場面。わくわくしました。本当に、この未来が現実になっていたら、どれほど胸がすく思いがしたことだろうと…恵棟…!

P. 120:王師と相対し、絶対絶命の朽桟(土匪)を助けに李斎らが駆けつける場面。莫迦か、と言いながらも、鼻の奥が熱くなる思い…の朽桟。胸熱の場面です。この辺りの展開、「アルスラーン戦記」や「三国志」を読んだ時の興奮を思い起こさせました。

P. 134李斎と霜元が驍宗に再会する場面。やっと…‼ 泣けました。山田章博先生の挿絵がまた、素晴らしくて。そして、後々わかる李斎の表情の意味。挿絵を見たとき「あれ?」と思ったのですよね。深く共感します。

P. 151〜153:阿選の麾下だった友尚が阿選を裏切り、驍宗側につくことを決め、自身の麾下に今後を訊ねる場面。麾下の一人が「ずっと――本当に嫌でした」と泣く場面、本当に堪らなくて、一緒に泣きました。よかったね…!

P. 192:驍宗が鴻慈の実に鈴を結び「礼だ」と答える場面。民の祈りと驍宗が通じ合っているようで、じんわりきました。

P. 230:阿選が泰麒に「驍宗を選んだお前が悪い」と嗤う場面。まだ言うかー!という。ほんま…こいつだけは…!と、成長も進歩もない阿選に幻滅するとともに、妬み嫉みという感情は人を愚かに、そして退化させるのだなと思いました。

P. 266酆都が死に、驍宗に逃された去思が、過去と重ね、泣きながら騶虞の背にしがみついて遁走する場面。酆都が好きだったので、まさかここで死ぬなんて…!と衝撃でした。この後も次々と…そして帰泉が無意識に驍宗を庇って死んでいったのが、なんというか、なんとも残酷な展開でした。

P. 289自分を守りきって息絶えた飛燕の頭を膝に乗せ、李斎が丁寧に毛並みを梳いてやる場面。ここが一番泣いたかもしれない…飛燕はなんというか、主人(李斎)との絆の強さがひときわ感じられる騎獣だったので、大好きで…「風の海〜」から、登場のたびに頬が緩んでしまうような存在だったので…とても辛いです。何度も思い出し泣きしてしまう…

P. 339:鴻基に赴く李斎に着いていくと言い張る泓宏の軽口と、その後の述懐「今回は、きっと最期まで…」。これが地の文で書かれているのが堪りませんでした。そして静之と泓宏の前では堪えていた李斎の涙が、夕麗の前で溢れてしまう場面。女だから、同輩の前では泣くことも怒ることも許されない…という夕麗の言葉に、李斎の強張りが解ける様が切なくて、嬉しくて。これまでずっと張り詰めていた李斎が、やっと心の鎧を脱げる瞬間を得られたんだと思うと…そしてとても、共感しました。女として。

P. 355:死を覚悟した泰麒が耶利に「驍宗様を王として選んだことを後悔していない」と告げる場面。泰麒が死を選ぶことが、戴を正常な状態に戻す唯一の方法だと思ってはいたので、そこまで追い詰められた主従に、悲しみの閾値を超えそうでした。

P. 384〜387邢台で泰麒と驍宗が再会する場面。「…嵩里か/…大きくなったな」と声をかけた驍宗に胸が熱く…!驍宗は成長した泰麒をどんなふうにイメージしていたのかな、とふと思いました。琅燦が「やはり化物だったな」と漏らすほど、自らの手で殺生をするほどに、強靭になっていようとはと、驚いたのではないかなと。そう変わらざるを得なかったこれまでを思うと胸が締め付けられる。そして、驍宗の前での転変…!「よくやった。――もう良い」と告げられ、泰麒の心が驍宗に向けて解放された瞬間に、麒麟としての力が真実戻ったのではと考察しています。本作一番の名場面だと思います。

P. 394:ついに登場した英章!もっと活躍が見たかったのでもうちょっと早めに出てきてほしかった笑。そして酆都が創った墨幟の幡が、近い未来に必ず掴み取れる勝利の象徴のようで、涙腺が決壊しました。

P. 407〜411:雁から六太と尚隆が戴を訪れる場面。六太に「よくやった」と労われて李斎が言葉に詰まる様に、「黄昏の岸〜」の頃の、戴と李斎らの状態と、ここに至るまでの長い道のりを思い、本当によくやったよ…と一緒に泣きたくなりました。そして麾下と再会し、「よくぞ生き延びてくれた」と喜ぶ李斎に、光祐が腕で顔を覆う姿が、本当に堪らないです。ここの一連の流れは、戴の苛烈にすぎる運命の中で翻弄され、命を落としていったたくさんの人々と、それでも諦めずに抗い、戦い続けた人々の祈りの強さを思うと、本当に、本当に泣ける場面でした。

P. 415〜417英章が驍宗に再会した時に本当に泣き崩れたのか、めっちゃ知りたいな…と思いつつ。李斎が述懐する「過去が現在を作る。ならば、いまが未来を作るのだ」という言葉が、胸に刺さりました。

何度も絶望したけど諦めなくて本当によかった、と、本当に熱くなったエンディング。ラストシーンの色鮮やかさ。第一巻からずっと、凍える冬の白さ、苛烈さが物語全体を覆っていたので、戴という国はこんな美しさを内包していたんだな、と驚きました。泰麒の傷が癒えて、早く皆の元へ戻って来れますように。

そして最後のイラスト!「戴史乍書」があんなに厚く…!御代つつがなけれと祈念申し上げる…!


…解説で「次の作品を楽しみに…」と書かれていたので、えっまじで???と思いました。短編集のことではなく???まだ長編の予定があるなら、本当にめちゃくちゃ嬉しいのですけども…‼︎‼︎‼︎

www.shinchosha.co.jp

 

2019年11月9日のつぶやき

せっかくなので、今日、読み進めながらSNSに呟いていた感想を、こちらにサルベージします。本当に幸せな一日だった…!

10:08:26

ああーなんかちょっと緊張してきた 待ち焦がれてきた十二国記の新刊がついに読める、けど読んだらもう終わってしまう…来年の短編集はあるけど…!でも早くあの方の安否が知りたい(葛藤)

10:26:22

いざ‼︎ ジュンク堂の店員さんが多分ファンの方で、小冊子を手渡してくださる時のはにかんだような表情に、私はほんとにちょっと泣いた 読む前にここに記しておく、私は泰麒を信じている

11:31:43

十二国記、第三巻P.111で涙が…

14:15:37

第三巻を読み終えた。アドレナリンの分泌半端ない。ものっそい興奮している

14:25:06

好きなカフェを行脚しながら読んでいるのだけど(先月の発売日もそうだった)次のお店に移動しながら幸せを噛みしめている 小野先生と同じ時代に生きて、十二国記のファンで本当によかった…!

19:44:19

第四巻、読み終えた…凄かった。素晴らしかった 今までいろんな本を読んできたけど、これまでの待ち焦がれた年月も相まって、最高の読書体験でした

#十二国記

19:48:15

まだいろんな疑問はあるので、改めて丹念に読み返しながら、わからないところはきっと来年の短編集で!と信じる とりあえず「ここはやばい、泣くわ…」と鳥肌が立った場面、2冊通して28箇所もあった

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